はじめに
皆さんも一度は憧れたことがありませんか?
医療系の国家資格に。
それは医師をはじめ薬剤師、放射線技師、看護師、理学療法士などでしょうか(主観で挙げています笑)
看護師を主役にしたドラマは非常に多いですが、営業職のサラリーマンが主役のドラマはあんまりないですよね。ただのイメージの世界ですが営業職より医療系資格による独占業務がある職のほうがある種ステータスがあるように感じます。
そういった医療系職種について一般社会人が今からでもなれるのかを考えたことがあります。
それを考える上でのキーポイントとして、それら資格試験の受験要件のことがあります。
【 受験要件(受験資格)】
医療系国家資格を受験するためには、定められた教育課程を修了している必要があります。例えば医師や薬剤師であれば大学へ行って6年生の過程を終えないといけません。まず前提として大学の医学部、薬学部に合格しないといけません。
例の話ですが医師や薬剤師に社会人がなることは、なかなか難しいですよね。
「なかなか難しい」という言い方もニュアンスが正しくないかもしれません。ほぼ無理ですよね。。
無理だと考えられる理由として時間とお金のことがあります。
時間:資格取得に向けた勉強時間の確保、前提の学校へ入学するための勉強時間の確保
お金:全勉強期間中の学費、生活費の捻出をどうするか
その点で医学部、薬学部はハードルが高すぎます。ちょっと今回のお話からは除外して考えます。
※余談※
時間とお金がなんとかなるのであれば挑戦できると思います。過去に知人でいました。親は開業医でその本人は医学部受験に失敗、浪人後有名私立の法学部へ入学。卒業し一般企業へ入社するが、そこでやはり医学部受験をしたいと発起。親もそれを望んでいたようで会社をやめ実家住まいで受験勉強を始めた。
もし運良く大前提の”挑戦ができる環境”が整ったとしても、そのプレッシャーは計り知れないと思います。僕はその後彼がどうなったかは存じていません。
アッパークラスの資格は抜きましたが、それら上位資格でなければ「社会人でもまだ取得可能性は高いですよ」といった内容のお話を今回はさせていただきます。
国の支援制度を使う
まず最初に取得可能だと思われる資格は看護師や理学療法士をはじめ以下に列挙する資格です。
歯科技工士、視能訓練士、臨床工学技士、言語聴覚士、精神保健福祉士、はり師、きゅう師、柔道整復師、歯科衛生士、あん摩マッサージ師、作業療法士、助産師、保健師、臨床検査技師、義肢装具士など
なぜ取得可能だと言えるのか。
ズバリそれは国の支援があるからです。
その支援制度のことを専門実践教育訓練給付金といいます。
支援のコア部分は以下2点です。
専門実践教育訓練給付金の概要
資格を取得するためには専門学校へ通う必要があるが
①その学費について国が70%の補助をしてくれる
②通学期間中は生活費(教育訓練支援給付金)の支給が受けられる
※細かい内容については下で説明します
例えば看護師資格を取得するため3年制の専門学校(昼間)に通うとします。学費が3年間で150万円かかるとしたら、105万円は国が負担してくれます。
さらに失業状態にあるのであれば教育訓練支援給付金という名称のいわば生活費を学校へ通っている間(この場合3年間)もらうことができます。
このケースであれば45万円の元手と3年間という時間さえあれば看護師資格を取得し見事キャリアチェンジすることが可能になります。
これ初耳だと「信じられない」と思いませんか?
そんな訳ないだろうって。
でもそんな訳あるんです。
下で一つずつ説明していきます。
専門実践教育訓練給付金
僕は社会保険労務士試験の勉強をしているときにこの制度を知りました。 僕は宅建試験(宅地建物取引士試験)を2011年度に受験し、独学で一発合格しました。 そしてそのまま1ヶ月後の管理業務主任者試験にも合格しました。 そのとき僕が行った学 ... 続きを見る
※関連記事※受験状況についてはこちらの記事で少し触れています
3ヶ月で宅建に合格した学習方法公開【そのまま1ヶ月後に管理業務主任者にも合格】
学習範囲の「雇用保険」の分野で出てきます。
それで僕は知りましたが、普通に生活しているとなかなか知り得ない制度だと思います。すごく有益なのにもったいないです。
では本題に入っていきます。
今回ご紹介する「専門実践教育訓練給付金」これは雇用保険制度の給付の一種です。ごちゃごちゃしてくるのであまり名称を出したくないですがさらに詳しく言うと「教育訓練給付制度」の一つです。
【例えばその他の”雇用保険の給付”は何があるかというと】
基本手当(失業等給付)があります。「失業保険」という名称で認知されており有名ですね。離職前6ヶ月間の賃金から計算された日額に給付率を掛けた額が90日間受け取れます。
上の黄色い枠でざっくりと専門実践教育訓練給付金について触れましたがもう一度まとめておきます。
専門実践教育訓練給付金
【概要】
雇用保険の被保険者(or であった者)が厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練講座を修了する見込みで受講している場合(修了した場合)に、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)を支給する。
また修了後1年以内に目標としていた資格を取得し雇用保険の被保険者となる就職をした場合は教育訓練経費の70%(年間上限56万円)で専門実践教育訓練給付金を再計算し、既支給分の差額を支給する(限度額168万円)
【支給要件】
・訓練実施前に通算3年以上の雇用保険被保険者期間がある
教育訓練支援給付金
専門実践教育訓練給付金の受給資格者のうち、次の条件を満たした方が失業状態にある場合に、訓練受講をさらに支援するため、雇用保険の基本手当の日額に相当する額の80%となる「教育訓練支援給付金」が支給される。
・専門実践教育訓練を修了する見込みがあること
・専門実践教育訓練の受講開始時に45歳未満であること
・受講する専門実践教育訓練が通信制または夜間制でないこと
※その他条件あり
いやあ何言ってるかカオスですよね笑
短くまとめようとするとこうなります。
詳しくは以下厚労省HP、リーフレット(PDF)をご確認ください。複雑なので大本のページも文章量がとても多くなっています。
厚労省HP~教育訓練給付制度~
専門実践教育訓練給付金のご案内(PDF)
結構ふとっ腹な制度です。最大168万円の学費が支給されるってすごいですよね。
でも素人ながらに疑問に思うのは失業手当等も多くの方に支給しているし、国はさらに高額なこういった給付金を支払って問題ないのかなという点です。
そういったことで財政面も調べてみました。こういった状況です。
雇用保険の積立金
原資となるのは雇用保険の積立金です。働いている方は皆さん毎月の給与明細で「雇用保険」の名称で天引きされていると思います。(一部該当しない労働者もいます)
この積立金がH30年度の時点では約5.1兆円の残高があるようです。
【引用】雇用保険関係収支状況 [職業安定分科会雇用保険部会(第133回)資料2](令和元年10月29日)
その他様々なデータが以下で公表されています。
厚生労働省>各種統計調査>厚生労働統計一覧 > 雇用保険事業月報・年報
これだけ財源があれば専門実践教育訓練給付金が成り立つのも頷けます。一人一人に専門学校の学費100万円台を支給をしたとしても間に合うと。。
※ちなみに残高がどんどん目減りしていく見込みになっていますが理由は育休の支給額が上がっているからだそうです。財源が無くなってしまいそうですね。
でもそれってどれだけの人が実際申請して使っているんでしょうね。総額はどれぐらいになるんだろう。
それも調べてみました。
【引用】主要指標(5)[教育訓練給付]及び[雇用継続給付]
年度 | 専門実践教育訓練給付金 | 教育訓練支援給付金 | ||
受給者数(人) | 支給金額(百万円) | 受給者実員数(人) | 支給金額(百万円) | |
平成28年度 | 20,874 | 2,843 | 15,963 | 2,145 |
平成29年度 | 38,781 | 4,911 | 27,342 | 3,803 |
平成30年度 | 58,486 | 8,075 | 32,869 | 5,320 |
令和元年度 | 71,648 | - | 35,378 | - |
令和2年 4月度 | 19,882 | 2,365 | 4,875 | 1,067 |
非常に多くの方がこの制度を使っているようです。
平成30年なんかは5万8千人ぐらいが制度を使っていて合計80億円ぐらい支給されています。生活費の意味合いの支援給付金のほうも53億円が給付されていますね。
この制度のことが浸透していっているのか受給者がどんどん増えてきています。直近のデータとして令和2年4月度(単月)のデータも載せていますが2万人が利用しているようですね。
※ちなみに専門学校の開校時期である4月と10月が飛び抜けて申請者が多いです
特定一般教育訓練給付金
ちなみに似たような制度で特定一般教育訓練給付金という制度もあります。これも「教育訓練給付制度」の一つです。
もうそろそろ名称の区別がつかなくなってきませんか?笑
全部同じ名称に見えるという現象が起こってきます。
簡潔に言うと「業務独占資格等の資格取得目的の講座の受講に要した費用について、国が40%支給する」というものです。
例)資格の大原の社労士合格講座に申込をし受講修了した
→受講料18万のうち7.2万円(40%)は国から支給される
こちらもわかりやすく非常に簡潔にまとめています。詳細は厚労省のリーフレットをご確認ください。上と同じく「雇用保険を3年以上支払いしている(被保険者)期間が必要」など要件があります。
厚労省HP(教育訓練給付制度)
リーフレット(PDF)はこちら
こちらの制度は①仕事をしながら、②夜間や土日の通学(通信も)で、③独占業務がある資格を取得するための支援制度だと解釈できます。専門学校にいかなくて良い資格、実践がない資格で生きてくるのかなと。
対象資格を見るとステータスの高いものが並んでいます。
公認会計士、司法書士、税理士、弁理士、不動産鑑定士、社会保険労務士、土地家屋調査士など
手が届きやすそうなところだと行政書士などもあります。
国が経済的負担を軽くしてくれますが専門学校に入学するわけではなくあくまで本人の自主学習に委ねられています。本人のやる気スイッチが入っていることが前提です。
もし1年程度の講座を修了し無事社労士などに合格すれば、その後の「雇用の安定性」について言うと、専門学校に行って看護師資格等を取得したのと同じような状況と言えると思います。要する期間的にはこちらのほうが短いのでパフォーマンが良いと思います。
まとめ
医療資格に絞ってお話してきましたが専門実践教育訓練給付金制度はその他多くの資格も対象です。
介護福祉士、保育士、社会福祉士、美容師、理容師、調理師、栄養士、管理栄養士、製菓衛生師、海技士、測量士、測量士補、建築士、航空整備士、航空運航整備士、電気工事士、キャリアコンサルタントなど
航空整備士を取って空港内で働くというのも憧れますよね。人によってどういった業務独占資格にビビっと来るかは違いがあると思います。
これら対象資格の詳細は以下厚労省のページで確認してみてください。資格を選んで検索をすると対象の全国の専門学校が表示されます。そこで学費等も確認ができます。特定一般教育訓練給付金の対象講座も見られます。
教育訓練講座検索システム
※リンクがうまく開けない場合はこちら厚労省HP内の同名称のリンクをクリック
民間側から専門学校等の確認を取る場合はこういったサイトからでしょうか。
流石は民間です。教育訓練給付制度について無料の電話相談等も受けているようです。詳しく人から聞いてみたい方は相談してみてください。
[資格取得、就転職の総合校]
・ヒューマンアカデミー
”資格”で絞って全国の専門学校を横断的に検索
[専門学校を探すなら]
・スタディサプリ
制度自体は何も怪しいことはなく、どれも雇用保険制度が掲げる理念「雇用の安定化」からくる具体的な施策です。「手に職をつけて、今後失業するなよ」ってことでしょうね。
こうして考えるといったん就職し社会人になっても、まだキャリアチェンジのチャンスが広く開かれていることになります。
今からでも全く畑違いの独占業務の職種へ転職が可能です。
制度自体を見ると何にでもなれるとても良い制度のように見えますが、実際看護師の友人に僕がこの件を話してみたときこう言われました。
「目的意識が無かったら多分実習の段階で辞めるよ。ついていけないはず」
なかなかキツイ言葉ですが、そのとおりなんでしょうね。
費用のことじゃないんだと。やる気、熱意の有無が焦点だと。
もし安く専門学校に行けるからという理由で、半端な気持ちのまま飛び込んでしまうと後々困ることになりそうです。
その先のキャリアプランありきで、制度を利用すると良いと思います。
他にもライフハック記事をたくさん書いています。気になるものがあればチェックしてみてください。
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